2006年03月16日 更新

「苦情」メールをいただいて

最後にこのコーナーをアップしてからもう2年以上が経過しました。その間に当院には色々な変化がありました。患者数の予想以上の増加、理事長の現役引退、予約制の導入など。そして、最近以下のようなメールを患者さんからいただきました。

> お世話になっております。
> さて、クリニック常設の“目安箱”にも一筆入れさせて頂いたのですが、一患者の声をお聞きください。
> 先日、診察を受けている際、不明な点が生じたので先生に問い返しました。
> すると、それが大変的外れなものであったのか、先生は急にご気分を害され、憮然と「…だから、さっき説明した通りです」と言って黙されました。
> こちらの知識・理解力不足で、先生のペースを崩してしまい、ご不快な思いをさせてしまったかも知れませんが、患者は大抵の場合、素人です。
> 産婦人科医からすれば当たり前の事も、素人には解かり難いものです。
> だからこそ、お金を支払い、専門家に診て頂くのです。語弊があるかも知れませんが、その素人にも解かるよう、何度でも解説・指導して下さるのが、本来の形なのではないでしょうか?

確かにこの方の言われる通りだと私も思い、早々にお詫びのメールを返信させていただきました。
では、どうしてこのようなことが当院の外来で起こってしまったのだろうか?多分、同じような出来事はこの方だけではなく他にも起こっていると想像できます。もちろん、私個人の性格に起因している部分もあると思いますが、これでも人一倍、患者さんのためにと思って日々の診療を行っているつもりです。
当院では現在、常時約500~600名の方の不妊治療を行っており、ひと月ののべ来院患者数は1500-2000人、一日平均の来院患者数は約80人です。体外受精の採卵は30件前後/月、胚移植は40件前後/月、人工授精は100件前後/月です。それに対して医師は私1人で、診療時間は1日7時間ですので1時間あたり10人以上の診察を行い、その合間に採卵や移植、人工授精などを行っている状況です。診療において安全かつ確実に適切な検査および治療を進めて行くことは極めて重要と考えており、そのためには様々なことに時間がかかります。また、不妊診療の多くの場合には内診や経膣超音波検査、頸管粘液採取などが必要で、それらにかなりの時間を費やすことになり、患者さんとお話できる時間はあまり残されていません。そうした状況の下で自分なりに何が重要かを考え、全力を挙げて診療を行っているのが現状で、昼休憩をわずかしか取れない日がほとんどです。そのような状況が今回のような出来事を招いた要因のひとつかも知れません。
医師の補充は以前より検討していますが、診療内容が不妊症専門と特殊なため、適当な人材がなかなか見つかっていません。また、患者さんの数の制限は、予約制導入時(平成17年1月)より初診患者さんの予約数制限を図っておりますが、不妊診療の特殊性のせいか紹介元の先生や患者さんから多くの苦情が寄せられ、なかなか徹底できていない状況です。

私は常々「経験」は「宝」と思っています。今回このような貴重な意見をいただき、猛省するとともに今後の診療に役立てて行きたいと思います。
また、私は医師と患者の関係において「信頼」関係の構築はとても重要と考えています。したがって、信頼が得られるように、信頼に応えれるように日々努力しているつもりです。しかし、お互い人間ですのでそう簡単にだれとでも信頼関係が成立するわけではありませんし、時間に追われる状況の下では信頼関係構築には時間がかかるものだと思っています。その点をどうか患者さんの皆さんにもご理解いただければと思う今日この頃です。