新聞、テレビ等で日本で初めての「代理出産」が報道されました。先日(5月18日)広島での慶応大学産婦人科の吉村泰典教授の講演で「代理母、借り腹は日本では禁止の方向」と聞かされたばかりだったのでとても驚かされました。詳しい事情は当事者達(患者さん、ご主人、患者さんの妹さん、根津医師など)しか分からないことでしょうが、報道された内容からは今回の事に私は共感を憶えました。私はまだ生殖医療に携わるようになってまだ数年であり、今回のような患者さん(子宮摘出により自分の体内での妊娠の可能性を失った方)に出会ったことはまだありませんが、子宮摘出を余儀なくされ、しかし自分達の子供を望む夫婦に対して他人がその治療を「禁止」することがはたして正しいことなのでしょうか?許されるのでしょうか?国家が定める法とはそのようなことをも規制するものなのでしょうか?代理母となる女性の健康や生まれて来る子供の将来に対する危険性をその「禁止」の理由にしているようですが、予想される様々な状況に対して十分慎重に検討したカウンセリング、インフォームド・コンセントのもとでは「代理出産」はよいのではないでしょうか。つまり無条件で認めることは確かに危険があると思いますが条件を満たせば認めるべきではないでしょうか。
「All or none(全または無)」ではなく「Case by case(状況により判断)」だと思います。全面的禁止(ドイツ、フランスなど)や全面的許可(アメリカなど)にすることは簡単です。しかし条件付きで認めることにこそ日本人の良識があると思います。
多くの方は私と同様の考えかも知れません。しかし一方で我々医師に対する信頼感の欠如が法的規制の方向へ進ませているのではないでしょうか。事実、信頼に足りない医師が多く存在していることは確かです。
皆さんはどのようにお考えでしょうか?
院長の時々Blog
2001年05月20日 更新