「税」の基本は「性悪説」?
「コロナ禍」で日々の生活は大きく変化しました。
外出時の常時「マスク着用」や「アルコールでの手指消毒」の徹底、様々な場面での「検温」など様々ありますが、その一つに「大人数での会食の禁止」があります。
「禁止」と言うと少し厳しい感じがしますが、医療従事者の我々にとっては、この2年間、ほぼずっと「大人数での会食の禁止」が続いています。
したがって、職員数が30人超の当院の「忘年会」も2年連続で「中止」となりました。
それまでは毎年必ず開催し、職員の1年間の労をねぎらうと共に、職員間の親睦を図るとてもよい機会でした。
「コロナ禍」において、何かそれに代わる事ができないかと考え、「職員間の親睦」は無理でも、せめて1年間の労をねぎらう意味で「食事券」をスタッフに配ることを思いつきました。
大勢での会食は「×」でも、少人数の会食は少しずつ可能になってきているので(オミクロン株の出現でこの先どうなるかは不透明ですが)、1年の終わりに、家族や友人とちょっと贅沢な食事をして、楽しい時間を過ごしてもらえたらいいかな、と考えました。
我ながらなかなかいいアイデアと考え、早速、市内のホテルの食事券を手配しましたが、ふと、「これって、経理的には福利厚生費でいいのかな?」と思い、当院の顧問税理士さんに急いで尋ねたところ、「忘年会の費用は福利厚生費として認められますが、職員への食事券配布は職員個々の収入となり、課税対象となります。食事券は現金化が可能で、また、職員本人が使用したかは不明なので、賞与と同様の扱いとなります。旅行券も同様の扱いとなります」との回答でした。
「えー、そうなんだ!」と思わずつぶやいてしまいました。つまり、例えば1万円の食事券を配布しても、その一部は職員個々が税金(所得税、市民税)として国に納付することになり、実質は数千円になってしまうと言うことです。
そんなこと言われても、「コロナ禍で忘年会が開催できない代わりなのに何で?」と思い、更に自分でもネットで調べてみました。
先ず、そもそも「福利厚生費」とは何かですが、「給料や賞与以外に会社が従業員のために支出する費用のことを、福利厚生費と言います。 従業員の生活の安定・向上を目的に、住宅や飲食など様々な意味での支給にかかる費用です。 税法で経費としての計上が認められ、非課税対象とすることができます。」と書かれていました。
次に、従業員への「食事券配布」について調べてみると、私と同じような疑問に関するQ&Aがいくつか見つかり、どれも当院の顧問税理士さんの回答と同じ内容でした。
なるほど、職員が一堂に会して飲食を共にした際の費用を会社が負担するのは「会社が従業員のために支出する費用」として「誤魔化」しようがないけど、食事券を配布して職員個々で別々に食事をするとなると、それを証明するのは難しく、「誤魔化」そうと思えば「誤魔化」せて、「税」を逃れる手段としても使える、つまり「税」の基本的な考えは「性悪説」ってことかと納得してしまいました。
もし「食事券」を「福利厚生費」と認めた場合、例えば会社が従業員へ配布すると言って100万円分の「食事券」を購入し、実際には従業員へ配布せずにこっそり「現金化」(換金率:90-93%)すれば、税金の掛からない自由に使えるお金(90-93万円)を会社は手に入れることになり、税収は減ります。しかし、会社としては元の100万円が増えるわけではなく、7-10万円が「金券ショップ」の懐に入ることになります。
そうすると、そもそも「食事券」や「旅行券」が現金化できる「仕組み」自体に問題があるような気がしてきました。「食事券」や「旅行券」は、「何か美味しいものでも食べて下さい」とか「旅行を楽しんできて下さい」という「こころ、思い、気持ち」で贈るもので、「現金化」を想定して贈るものではないはずです。
「法律」に詳しいわけではありませんが、「刑法」では確か「疑わしきは被告人の利益に」と言われていると思いますが、「税」においては「疑わしきは国の利益に」という仕組みなのかなあと、この件で感じました。
「Go To Eat」、「Go To Travel」もいいのですが、今回の職員への「食事券配布」は一定の経済効果が得られるはずで、しかも「大人数での会食」を減らす効果もあり、勿論一定のルール(限度額、有効期間等)を設ける必要はあると思いますが、「忘年会」の代わりとして「奨励」・「普及促進」してもいいくいらいのことだと思うのですが、皆さんはどう思われますか?
「平時」と違い「コロナ禍」では特殊な状況が様々生じています。今回の「食事券配布」も含め、国には臨機応変にきめ細かな対応を求めたいと思いました。
岸田さん、「コロナ禍においては、会社の従業員への食事券・旅行券配布は「福利厚生費」と見做し、非課税とします!」と宣言してみてはいかがでしょうか?